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前立腺肥大症

前立腺肥大症とは

前立腺肥大症とは、文字通り前立腺が肥大して、様々な排尿の症状を引き起こす病気です。前立腺が肥大する原因は完全にはわかっていませんが、男性ホルモンなどの性ホルモン環境の変化が関与すると言われています。前立腺肥大症を発症する明らかな危険因子は加齢ですが、その他に遺伝的要因、食生活、肥満、高血圧、高血糖、脂質異常などがあげられます。

一般的な成人男性での前立腺の大きさは、体積で表した場合には20ml以下と言われています。個人により差はありますが、前立腺肥大が進むと尿道を圧迫し尿の出が悪くなり、残尿が多くなり排尿の回数が多くなることがあります。

治療

前立腺肥大症の程度を下記の検査で評価した後で、内服治療を開始します。

主に3種類(交感神経α1遮断薬、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬、抗男性ホルモン薬)の薬剤が広く用いられています。

α1遮断薬(タムスロシン、ナフトピジル、シロドシンなど)は、前立腺平滑筋にある交感神経受容体(交感神経α1受容体)を遮断することにより、前立腺平滑筋を弛緩し(緩め)、尿道の圧迫を解除して、尿が通りやすくします。また、ホスホジエステラーゼ5阻害薬(他タダラフィル)は、前立腺や膀胱の出口の平滑筋を弛緩させて、尿を通りやすく作用があることが示されて、前立腺肥大症にも投与されるようになりました。もうひとつの薬(デュタステリドなど)は、前立腺を小さくして、前立腺肥大による尿道の物理的な圧迫を軽減します。前立腺の肥大には男性ホルモンが関与していますが、この男性ホルモンの前立腺に対する作用を抑えることにより、前立腺は縮小します(1年の内服で前立腺サイズが25〜30%縮小します)。植物から抽出したエキスを薬にした生薬や、いくつかの漢方薬が前立腺肥大症治療に使われることがありますが、有効性については十分な科学的根拠が示されておらず、α1遮断薬よりは効果が劣ります。副作用はまれです。

治療後尿閉、残尿が多い方や薬の効果が期待できない方、副作用が強い方は、連携先の病院にご紹介し経尿道的前立腺手術(約1週間入院)を勧めております。

検査

①自覚症状の評価(IPSSスコア)

自覚症状の程度(重症度)の評価には、症状質問票を用います。世界共通で用いられている国際前立腺症状スコアは、7つの症状について、その頻度毎に点数がつけられており、患者さんが自分にあてはまるところに〇をつけることにより、症状の程度をスコアで評価することができます。合計0~35点で、7点以下を軽症、8~19点を中等症、20点以上を重症として、前立腺肥大症の重症度を調べます。症状とは別に、付随するQOLスコア質問票で、前立腺肥大症の症状がどれくらい支障となっているかを評価することもできます。

国際前立腺症状スコア(I-PSS)・QOL スコアシート

②直腸内指診

肛門から直腸に指を入れ、前立腺に触れることで、前立腺の形や硬さ、痛みの有無を調べます。前立腺に炎症があると強い痛みがあり、また前立腺癌があると硬い腫瘤を触れることがありますので、前立腺肥大症以外の疾患をチェックするのに重要な検査です。

③尿検査

尿の濁りや血尿の有無、尿路感染症の有無などを、肉眼的検査、および顕微鏡的検査などで検査します。

④尿流測定

トイレ型の検査機器に排尿すると、尿の出方がグラフで示され、尿の勢い(1秒間にどれくらいの尿が排出されるか)、排尿量、排尿時間などが自動的に数値化されて表示されます。簡便に排尿障害の有無や程度をスクリーニングすることができます。

⑤残尿測定

排尿直後に膀胱内にどれくらいの尿が残っているかを測定します。残尿測定は、排尿直後の下腹部の超音波検査により行うことができます。

⑥血清PSA(前立腺特異抗原)測定

PSAは前立腺から分泌される特異なタンパクで、血液検査により血液中のPSA濃度を測定することができます。PSAは前立腺癌のスクリーニング検査として有用で、正常値は4ng/dL以下ですが、前立腺癌があると正常値を超えて上昇します。4~10ng/dLの上昇はグレーゾーンと言われ、前立腺癌以外に、前立腺肥大症や前立腺炎でもみられることがあります。

⑦前立腺超音波検査

超音波検査により、前立腺を描出して、前立腺の大きさ(体積)を計測します。超音波検査は、超音波を発信する装置を、下腹部からあてる、あるいは肛門から挿入する、いずれかの方法で行われます。直腸内指診では正確な前立腺サイズの評価は困難ですが、超音波検査により正確に前立腺サイズを評価することができます。

⑧排尿日誌

排尿日誌は、排尿した時刻とその時の排尿量を24時間自分で記録するもので、排尿回数や1回の排尿量、また昼夜別の尿量を正確に知ることができます。頻尿の原因を知るのに役立ちます。

⑨血清クレアチニン測定

前立腺が非常に大きく肥大していたり、多量の残尿がある場合に、腎機能障害の有無を調べるために、血液検査でクレアチニンという物質の測定を行います。クレアチニン値が上昇していれば、腎機能障害が疑われます。

⑩上部尿路超音波検査

クレアチニンの測定と同様に、前立腺肥大症の合併症として水腎症の有無(腎臓が腫れているかどうか)を調べるために腹部超音波検査により腎臓を描出して検査します。

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